先生って、常にたくさんの生徒と接しています。でもそれだけでなく、保護者の方や他の先生方とも良好な関係を築くことが求められます。大勢の人と深い関係を築かないといけないというのは、他の職業との違いの1つですよね。
でも、それを考えすぎるとしんどくなってしまいます。
自分のクラスの運営がうまくいかない、受け持ちのクラスの授業が反応悪い、同僚にイライラする・・・
こういった時の対処法をいくつかシェアします。
少しでも参考になればと思います。
まず前提として
人間関係を改善させるには、基本的には「人を変える」か「自分を変える」かのどちらかしかないと思います。
「自分を変える」ことは、「諦める」こととは少し違います。ここでは、あくまで、状況を変えて前に進むための方法を模索したいのです。
自分を変える:声の掛け方を変える
先生って、つい生徒に期待してしまう生き物です。期待して裏切られたとしてもなお、成長を期待して叱ったり諭したりするんですよね。(そしてそれが求められます。)
そしてそれが繰り返されるうちに、自分は何を求めているんだろうとふと我に返り、呆然とする。自分の無気力さに嫌気が差す。
でも待ってください。生徒は本当に努力していないのでしょうか?

自分に甘く、本当に努力していないこともあります。その時は、下記の「相手を変える」を参照してください。でも相手を変えようとする前に、自分を変える方法を試してからにしてください。でないと、生徒を実はすごく傷つけていたことが後から分かったり、そのせいで二度と心を開いてくれなくなったりします。
意識を変えようと、まずするべきことは、相手を知ろうとすること。
「よし、個人面談をしよう」
と思った先生、真面目でいいですね。個人面談は絶対すべきです。けど、個人面談でこういった状況が改善することは経験上あまり無いです。個人面談は、進路の話だったり生徒間の人間関係の話だったり、深刻な話を真剣にするときにするべきです。
先生と生徒の人間関係を改善するためにすることは個人面談ではなく、普段から声を掛ける、ということです。
私がよくすることは、授業中の机間巡視や休憩時間に、ちょっとしたことで声を掛けることです。

おとなしーい性格の女子生徒Aさんの場合
ある時、机間巡視中に、おとなしーいAさんの机を見ると、机の上が真っ白の文房具だらけでした。「あれ、全部真っ白やん。白好きなん??」って声をかけると、「あ、はい。」とだけ返ってきました。
その後白い雑貨や文房具が流行りだしましたが、あぁあの子は流行に敏感なんだなーということと、シンプルなデザインが好きなんだなーということが分かり、声のかけ方を流行や文房具や部屋のインテリアの話にシフトしました。
すると、以前よりもっと話すようになり、笑顔もたくさん見られるようになりました。

人懐っこい性格の男子生徒Bくんの場合
他にも、3年生の授業中に机間巡視をしていると、授業のとは違うテキストが出ている生徒がいました。
特に何も言わずに、その本を手に取りパラパラと中身を見ました。
その生徒は怒られると思ったのか、「あっすみません」と言ったのですが、私の中では怒るつもりは全く無く(もちろん牽制の意図はありましたが)、そのテキストに純粋に興味を持ったので、見ていたのです。
そのテキストは、消防士試験のための試験対策テキストでした。その生徒は数学が苦手だったので、載ってる算数の問題を指さして、「ぇ、こんなの出来る?大丈夫なん?」って聞くと、「まじやばいんすよー!笑」って返ってきました。
「先生、この問題解けます??」と、会話は静かに盛り上がりました。
(もちろん他の生徒への配慮と、Bくんの進捗も気にしてコントロールするのは必須です。)
その後も、時々そうして消防士試験の勉強は順調か声を掛けていると、こちらから聞かなくても進捗を報告してくれるようになりました。そういう会話をしていると、周りの生徒もなぜか一緒に心を開いてくれます。自分の話も聞いてほしいと、声をかけてくる生徒もいます。
家で家族とうまくいっていない生徒やご両親が忙しい生徒は、自分の話を聞いてくれる、自分に興味を持ってくれる、しかも真面目な先生がというだけでこちらに興味を持ってくれるようです。
このようにして関係性が出来てくると、「実は・・・」とある日急に大事な話を語ってくれたりするのです。
人を変える:緩急・メリハリをつけて話す
教育というのは当然、「人 対 人」です。
両サイドが上手く嚙み合わないと良好な関係性は築けません。
こちらサイドの工夫は前章で触れました。
生徒は思春期真っただ中。様々な事情が複合的に絡み合っています。
「諭してほしい、話を聞いてほしい、慰めてほしい、放っておいてほしい、叱ってほしい・・・」そんないろんな感情を、その時々で持っています。
一番してはいけないのは、生徒に好かれようと褒め倒したり、へりくだる態度をとることです。
そんな偽物の言葉は生徒にはお見通しです。生徒に馬鹿にされるだけです。
しかし中にはこういう先生もいるでしょう。

生徒を叱るのがニガテ・・・!
なぜそう感じるのでしょう?

それは、叱るのと怒るのとが、ごちゃまぜになっているからではないでしょうか。
<叱る> | <怒る> |
論理的 | 感情的 |
反発を生みにくい | 反発を生みやすい |
相手を思って | 自分本位 |
つまりまとめると、「うまく叱れる先生」というのは、「生徒のためになる話し方をしている」のです。
語気が強くても、相手のためを思って話していることは伝わるし、論理的だから、なぜ今叱られているのかが生徒も理解できるのです。
きちんと伝われば、次からは自分たちで注意しあえて直せるのです。
もちろん反発がゼロとはいいません。クラス運営としては、35人いるとすれば35人全員をその場で納得させられなくてもいいのです。
35人中半分でも理解してくれれば。クラスの雰囲気は変わります。
理解した生徒がまず変わり→それに影響を受けた生徒が次に変わり→時差を置いて理解した生徒が変わっていき→残るのは反抗心を持った生徒だけ。その生徒はクラスでマイノリティなので浮いていきます。
つまり、叱ったあとすぐに効果を発揮しなくても、正しいこと・生徒を思ってのことを言っていれば、時間差で必ず伝わるものなのです。
こういう生徒もいました。

信頼関係のまだ築けていない、頑固だけどまじめな女子生徒Cさんの場合
それまでどちらかというと担任の私のことを嫌っていたCさん。
部活動との両立の件で、モラルや校則にも抵触する中途半端なことをしていて、それまでに何度も話して生きたにもかかわらず直らず、ある日強く叱ったのです。
私の教師生活の中で一番強い語気で叱ったと思います。その生徒は泣いていました。
その生徒のどこが間違っているのかはっきり伝えました。行動の間違いと意識の間違いの両方です。
でもその生徒も苦しんでいるのも分かっていました。
なので、それが自分のためにはならないこと、同じ部活動のみんなのためにもならないこと。
その状況がおかしいことを時には諭しながら、時には語気を強めながら、叱りました。
泣きながら何度も堂々巡りする生徒の話。私も本当に苦しかったです。時間がまるで永遠のように感じられました。
その生徒も苦しかったと思います。まじめすぎて、でも不器用で、全部のことが上手く回せていなかったのだと思います。
でもその後、その生徒の間違った行動はぴたっとなくなりました。
そればかりか、それをきっかけに、ちょっとしたことでも報告したり相談してきたりするようになったのです。
最後、難関の第1志望校に合格した時には、抱き合って喜びました。
その生徒に、私の本気の思いが伝わったのだと感じた出来事でした。
上手く叱れるようになれば、生徒には必ず伝わる。
それがすぐなのか、卒業後何年か経った時なのか、その生徒が子どもを持った時なのか。
それは分からないけれど、先生は可能性を信じてその生徒のために伝えるのみです。
第三の方法:時が解決してくれる
人間関係を改善させるには、基本的には「人を変える」か「自分を変える」かのどちらかしかないと、前述しました。
が、実はもう一つあります。それは、「時が解決してくれる」。
出来ることをすべてやってみた、これ以上はどうしようもない時は、時が解決してくれるのを待つのも手です。考えても仕方のないことを考え続けても、メリットはありません。きっとタイミングが今ではないのでしょう。時が解決してくれると信じて、心を無にしましょう。
ただし、その間も冷たく接したりせず、普段通り、他の生徒と同じように接しましょう。
いざ生徒が話をしたい、頼りたいと思ったときに話しかけられる雰囲気は維持しておくべきです。その対等な姿勢はほかの生徒にも影響するはずです。(他生徒が「先生は分け隔てなく接しようとしている」という認識を持ってくれてかばってくれたり、サポートしてくれたりすることも多いです。)
出来ることをやったら、その後は寄り添いすぎない。
自分を大切にしながら、素敵な教師生活を送れますように。

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